一見簡単そうで難しい「除雪車の問題」がヤバすぎる

一見簡単そうで難しい「除雪車の問題」がヤバすぎる

「除雪車の問題」は、シンプルな問題文のわりに解法が難しいことで知られる有名な数学の問題です。ここでは、この問題の解法を紹介します!

問題文

これがその問題文です。

「午前中に雪が降りだした。雪は一定のペースで降る。除雪車が正午ぴったりに動き出し、最初の1時間では2kmの除雪を完了したが、次の1時間では1kmしか除雪できなかった。さて、雪はいつ降りだした?」

非常にシンプルですね。これだけで本当に解けるの?と思ったかもしれませんが、ちゃんと解けるようになっています。では、ここからヒントを少しずつ出していきますー。

状況説明

問題文からは状況がつかみにくいかもしれないので、まず状況を再確認しておきます。「雪は一定のペースで降る」というのは、雪が一定のペースでつもる、つまり、時間が経てば経つほど除雪車は前に進みにくくなるということですね。

また、除雪車は一直線にまっすぐ進んでいて(一回来た場所にはもどらない)、単位時間あたりの雪の処理量は常に一定と考えましょう。

ヒント1

除雪車が雪を処理した量は、雪の高さ$h$と除雪車が進んだ距離$x$の積で表されます。ここで注目したいのが、除雪車の速度が一定ではない点です。

速度が一定ではないので、当然最初の1時間と次の1時間では進んだ距離が変わってきます。単純な掛け算では雪の処理量が求まらないということです。(ここがこの問題の厄介な点と言えます。)

ヒント2

時間軸$t$を設定し、雪の高さや除雪車の速度などをすべて$t$で表してみましょう。最終的な目標は、雪の降り始めた時刻$t_0$を使って条件から方程式を立て、それを解くことです。

ヒント3

これが最終ヒントです!

速度$v(t)$は求められましたか?そこから移動距離を求めるにはどうすればいいでしょうか?

そう、積分すればいいですね!それも今回は数3積分です。$\dfrac{1}{x}$の積分は$\log |x|+C$になることを利用しましょう!

ここから下は、正解と解法が書いてあります。面白い問題なので、ぜひ自分で解けるまで考えてみてください!

準備はよろしいですか?


答え

答え: 午前11時$90-30\sqrt{5}$分

解法

まず、次のように変数・関数を設定します。

  • $t_0$:降り始めた時刻
  • $t$:時刻(単位:h)
  • $h(t)$:時刻$t$での雪の高さ(単位:m)
  • $v(t)$:時刻$t$での除雪車の速度(単位:km/h)
  • $x(t)$:時刻$t$での除雪車の移動距離(単位:km)

また、ここでは正午を$t=0$として、$x(0)=0$としておきます。

つまり、求める$t_0$は負の値です。

雪が$t_0$から一定のペースで降るので、比例定数$h_1$があって、次のように書けますね。

\[h(t)=h_1(t-t_0)\tag{1}\]

また、除雪車の雪の処理量は常に一定なので、$k_1$を定数として

\[h(t)v(t)=k_1\tag{2}\]

がすべての$t$で成り立つはずです。

そして、要となるのが次の式です。距離は速度の積分で求まるので、12時($t=0$)からの1時間での移動距離は

\[\int_0^1 v(t)dt\]

と表せます。これは条件文から2kmと与えられているので、こうなりますね。

\[\int_0^1 v(t)dt=2\tag{3}\]

次の1時間の条件も同じように式で表しておきます。

\[\int_1^2 v(t)dt=1\tag{4}\]

$(1),(2)$から$h(t)$を消去して、

\[\begin{align*}h_1(t-t_0)v(t)&=k_1 \\ v(t) &= \frac{k_1}{h_1(t-t_0)}\end{align*}\]

$\dfrac{k_1}{h_1}=k$とおいて係数をまとめておきます:

\[v(t)=\frac{k}{t-t_0}\tag{5}\]

さらに$(3), (4)$をひとつにまとめると、

\[\int_0^1 v(t)dt=2\int_1^2 v(t)dt \tag{6}\]

ここに(5)を代入すると、

\[\begin{align*}\int_0^1 \frac{k}{t-t_0}dt &=2\int_1^2 \frac{k}{t-t_0}dt \\ k\left[\log|t-t_0|\right]_0^1 &= 2k\left[\log |t-t_0|\right]_1^2 \\ \log\frac{1-t_0}{-t_0} &= 2\log \frac{2-t_0}{1-t_0} \\ \log\frac{1-t_0}{-t_0} &= \log \left(\frac{2-t_0}{1-t_0}\right)^2\end{align*}\]

ちょうど定数の$k$が消えましたね。ここまでくればあとは$t_0$を求めるだけです!

\[\begin{align*}\frac{1-t_0}{-t_0} &= \left(\frac{2-t_0}{1-t_0}\right)^2 \\ (t_0-1)^3 &= t_0(t_0-2)^2 \\ t_0^3 - 3t_0^2+3t_0-1&=t_0^3-4t_0^2+4t_0\end{align*}\]

3次方程式になるかと思いきや、ちょうど$t_0^3$の項が相殺して2次方程式になってくれました!

\[t_0^2-t_0-1=0 \tag{7}\]

しかもこの方程式、なんと黄金比の方程式になっています。解の公式を使うと、

\[t_0=\frac{1-\sqrt{5}}{2} \;\;\;(\because t_0 \lt 0)\]

となり、これは分に直すと$30-30\sqrt{5}$分なので、12時の$30\sqrt{5}-30$分前の

「11時$90-30\sqrt{5}$分(約11時23分)に雪が降りだした」

がこの問題の答えです...!

終わりに

今回は除雪車の問題を紹介しました!算数の文章題のような見た目なのに微積を使わないと解けないというクレイジーな問題でしたね。